新学期の始業式は、感染症対策で放送での実施となりました。
校長先生のお話では、丑年にちなんだ内容から、今年一年を志高く過ごしてほしいとのお言葉が生徒に届けられました。
3学期始業式
令和3年1月8日(金)
あけましておめでとうございます。
令和3年がはじまり、今日は3学期の始業式を迎えました。皆さんも知ってのとおり、今年は十二支で言うと「うし年」です。私たちは、すぐに動物の牛をイメージしますが、うし年の「丑」という漢字は、手の先を曲げてつかむ形を描いた象形文字です。植物に置き換え考えられ、発芽直前の曲がった芽が種子のかたい殻を破ろうとしている状態で、命の息吹を表していると言われます。すなわち、今にもはちきれそうなくらいエネルギーが充満している状態です。若さ溢れる皆さんにぴったりの年です。元気いっぱい命の炎を燃やしてください。
さて、1月1日0時に皆さん一人一人の時間口座に、1年、365日、8,760時間が振り込まれました。平等に与えられたこの時間を、これからどのように使っていくか、これは皆さん一人一人に任されています。年初めの始業式に当たり、「時間」ということについてお話したいと思います。
私たちが生きているこの世には、2種類の「時間」があるとされています。古代ギリシャではすでにこのことに気づいていました。一つは時計の針が刻む時間。すなわち、物理的な時間で、地球の公転や自転のサイクルに合わせて、すべての人に平等に流れていく時です。これを「クロノス」と言います。
いっぽう、もう一つの「カイロス」と呼ばれる時間は、人によって、あるいは場面によって、速く流れたり遅く流れたりする時です。例えば、楽しいときや集中しているときには時間はあっという間に流れます。反対につらいときや退屈なときは、時間は遅々として進みません。また、人生には誕生があり、出会いがあり、感動があり、成功があります。もちろん、その逆の事象もあります。人にはこのように特別な意味をもった時があります。これが心理的時間と言われるカイロス時間です。
ところで、このクロノス、カイロスという言葉は、もともとギリシャ神話に出てくる神の名前で、クロノスは過去から未来へと続く時の流れを、カイロスは人間の時の活かし方やチャンスをそれぞれ司っていると考えられていました。
今日が何月何日であるか、今が何時何分かを意識することはもちろん生活において必須のことです。けれども、自分にとって現在がどういう時か、どんな意味や価値があるのかなど、その時々を自分独自の時間として意識する、これもとても大事です。時間の長さではなく質を大切にすることが、人生の質を高め、よりよく生きていくことにつながるのではないでしょうか。
昨年末、本校工業科を卒業した72歳の方が学校に来られて、多額の御寄付を置いて行かれました。決して、事業等に成功して豊かな暮らしをされているというわけではありません。卒業して50数年かけてコツコツためてこられたお金ではないかと想像します。「今の自分があるのは、この新田高校で学べたからです。当時、工業科の先生に大変お世話になりました。本当に感謝しています。」と話しておられました。たぶんこの方は、当時とても中身の濃いカイロス時間を、ここ新田で過ごされたのだろうと感じました。このコロナ禍の中での御芳志に、余計、感動を覚えました。
皆さんもそれぞれの目標に向けて、精一杯充実したカイロス時間を過ごすよう願って式辞とします。